左官の仕事~ 土壁 撫で物仕上げ
和室に用いられる塗り壁は “ じゅらく ” と呼ばれており、皆さんも一度は耳にした事があると思います。
この じゅらく の名前の由来は 京都の聚楽第から採取される色土 からきております。
つまり、本物の じゅらく とは 聚楽土を使った土壁仕上げ の事なのですよ。
そして、この聚楽土を含む全国の色土を使って、鏝で撫で上げる仕上げの総称が 【 撫で物仕上げ 】 です。
撫で物仕上げにも種類があり、グレードによって単価も大きく違います。
簡単に説明させていただきますね。
《 切り返し仕上げ 》
土壁中塗りをした後、完全に乾燥させず(一日後か二日後)に水持ちが少しある状態で上塗りの材料を塗ります。
中塗り仕上げよりは大人しめだが、土と砂と藁の表情がかなり浮き出ていて表情豊かな仕上げです。
名前の由来は、仕上げに混入するワラスサを何度も切り返して使うからという説 と 本来の行程を切り返したまま省いてしまった仕上げという説 の二通りがあります。

《 糊捏ね仕上げ 》
角叉など(他に銀杏草、布海苔)を炊いて抽出した糊の中に色土と微塵スサ(ワラスサの細かいモノ)、微塵砂などを混入した材料を薄塗りで仕上げる工法。
薄塗りなので表情はかなり大人しい。
薄塗りで作業性も良いが、糊が入っている為に耐用年数は短い。
糊が入っているので外部では使えず、内壁専門の仕上げです。

《 糊差し仕上げ 》
後述の水捏ね仕上げの材料に海藻糊の溶液を少しだけ足した材料を使った仕上げ。
水捏ね仕上げに近い表情が出るらしい。

《 水捏ね仕上げ 》
糊を一切入れず、土と微塵砂と微塵スサ、そして水だけで作った材料で撫で上げた土壁最高級の仕上げ。
主に数寄屋、茶室、高級料亭などで施工され、その上品で繊細な表情は風格さえも漂わせている。
仕上げに使う鏝も大変高価な鏝で、現在ではそれを作れる鏝鍛冶も日本で数少ない。

《 長スサ散らし 》
水捏ね、糊捏ねを塗り付けた直後に長い藁スサを壁に投げ付け、撫で上げる仕上げ。

《 引き摺り仕上げ 》
舟形の特殊な形状の鏝を使い、パターンを付ける仕上げ。
主に数寄屋、茶室などで仕上げられている。

《 砂壁 》
藁スサを少な目にして、砂を多くした材料を塗り付け、撫で上げた仕上げ。
砂勝ちとも呼ぶ。
反対に藁スサが多い仕上げをスサ勝ちと呼ぶ。
現在では、樹脂で砂を固めた材料の事を指す場合が多い。

《 蛍壁 》
錆壁とも言う。
鉄錆を土壁に混入する事によって、後々に錆が出てきて、それが蛍火のような表情を出す事からこの名が付いた。

《 本聚楽 》
京都の聚楽第で採取された本聚楽土を使用した水捏ね仕上げ、もしくは糊捏ね仕上げの総称。
本聚楽という名が付いた商品、メーカー製の既調合品はこれを似せた仕上げで、本物ではない。

以上が主な 【 土壁 撫で物仕上げ 】 の説明です。
土壁・撫で物仕上げは既調合製品(ジュラク)と比べると土の表情が豊かで暖かみがあります。
本物の土を使って仕上げているからでしょう。
樹脂が多く入っている既調合製品(ジュラク)では安らぎはあまり感じられません。
ニセモノは所詮ニセモノなのですよね。
土壁に囲まれた空間に居るだけで心が休まります。
それはきっと、 土=大地 であり、人間のDNAが大地に包まれていたいと本能的に感じているからではないでしょうか。
だから土壁は人の心に安らぎを与えてくれるのだと思います。
家とは自身が休む場所であり、その休む場所が大地(土)に囲まれた空間なんて贅沢ですよね。
だけど、そんな贅沢を昔の日本人は当たり前のように取り入れてきました。
何故、心休まる素材を放棄するのか私には理解できませんが、土を塗る事は少なくなってきました。
心が安らぐ空間作りを求めるならば、素材は大変重要かと思います。
大地の源である土ならば素材として申し分ないはず。
もっともっと土壁が見直されれば良いですね。


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