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2012.04.20

左官の仕事~ ドイツ壁

古い洋館の外壁でたまに見かけるのが “ モルタル掃き付け仕上げ ” 、別名 【 ドイツ壁 】 です。

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凸凹の何とも味わい深い塗り壁仕上げですが、以外と歴史が古いのですよ。
大正末期に大流行した塗り壁仕上げらしいのですが、近年では滅多に見かけない仕上げですね。私自身は施工経験がないのですが、経験者からお聞きした施工方法を簡単に説明すると以下の通りです。

《 モルタルを塗り付ける → 鏝板にモルタルを乗せる → 鏝板の上から壁に向かってササラでモルタルを掃き付ける 》

モルタルを掃き付ける際、出来るだけ面白みのある模様を作る為に手加減をしながら掃き付け量を調整するのがコツだと聞きました。掃き付ける ササラ は、竹を20センチ前後に切って、それを幅3ミリ以下で切り揃え、束ねたモノ(直径3センチ前後)を使います。


生コンクリートが普及してなかった昔は洋館を 【 ドイツ壁 】 で仕上げる場合、 《 堅瓦壁下地 》 の上に施工するケースも少なくなかったと聞きました。

《 堅瓦壁下地 》 とは 木ズリ の上に 平瓦(表面に節目があるモノ) を 麻を巻き付けた釘 で留めて、モルタルで中塗りをしたモノとの事です。
相当に頑丈な下地壁らしく、重量もあるので構造自体もかなりしっかりしたモノが必要だったのではと推測できます。

大正末期から昭和初期まで は 《 堅瓦壁下地 》 の上に 【 ドイツ壁 】 で仕上げるのが流行っていたみたいですが、現在では日本全国捜しても数カ所の古い洋館しか現存してないと言われ、実際に施工する機会が殆どない 《 堅瓦壁下地 》 は非常にレアで絶滅寸前の左官工法となっております。

時代の流れとはいえ寂しいですね。

この 《 堅瓦壁下地 》 を聞いた事がある左官屋さんは非常に少ない と思います。
実際に施工する機会はないかもしれませんが、大昔にこのような左官工法があった事を伝えていきたいモノですね。


【 ドイツ壁 】 と呼んで良いのか分かりませんが、某テーマパークの洞窟では モルタルで掃き付けた仕上げ(モルタルの吹き付け???)が施工されております。
洞窟内の荒々しい表情を見て、 まだまだ可能性を感じさせてくれる仕上げ だと感じました。

古いけど新しい仕上げ、 【 ドイツ壁 】 の可能性を引き出せるよう、私達左官屋も研究しなければなりませんね。

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2012.04.15

左官の仕事~ モルタル 掻き落とし

今回は 【 モルタル 掻き落とし 】 についてです。


【 モルタル 掻き落とし 】 は別名 “ リシン掻き落とし ” とも呼ばれる仕上げです。
施工法は、白セメントもしくは着色セメントに消石灰と骨材を混入して作った材料を塗り付け、タイミングを見計らって掻き落とし器(剣山のような道具)かワイヤーブラシを使って粗面に仕上げます。
セメントペーストの色 、 骨材の色と大きさ 、 掻き落とし方法 などによって様々な表情が出せる為、 左官屋の個性が出しやすく、施主や設計士の要望も聞く事により 世界でただ一つの壁を作る事も可能 です。

この仕上げの特徴の一つが、 経年変化を楽しめる と言う事でしょうか。
仕上げた当時は新しくて綺麗ですが、 経年と共に滲み出てくる渋味も魅力の一つ であります。
もちろん、価値観の違いでこの渋味を「 汚い! 」 と思う人も居られるかもしれませんが・・・

洋風な住宅でよく施工されている樹脂系の塗り壁材料 などは塗り立ての状態が一番綺麗ですよね。
しかし、もって数年ヘタをすれば半年で黒ズミやカビなどで汚らしい壁に・・・
この状態を見て 「味がある!」 と言える人は少ないと思います。
悲しいかな、このような工業製品の塗り壁材料は 塗り替える事を前提に作られている のかもしれませんね。

それと比べると、この 【 モルタルの掻き落とし 】 は一度施工すれば、 “当分” 塗り替えはしなくて済みそうです。
控えめに “当分” と書きましたが、私の中では 《 メンテナンスフリー 》 に限りなく近い塗り壁 だと思っております。
その為には庇の大きさ等、建物の構造も重要ではありますが・・・
外壁で施工する前には必ず下地と建具廻りの防水をしっかり処理する事が重要ですね。
しっかりとした処理をするのには、手間暇を掛けねばなりません。

左官の塗り壁全般に言える事ですが、誰もが目に付く仕上げ部分はもちろんですが、 目に付かない下地部分こそ非常に重要 なのですよ。
しっかりと手間暇掛けて作った壁は長い期間、その美しさと経年変化を楽しめるかと思います。

若い頃に建てた家の木材が経年により色が変化して美しくなってゆく。

壁の色もゆっくりと変化をしていく。

施主も年を取り、家と共に渋味を増していく。

素敵だと思いませんか?

そんな家造りにピッタリ合う仕上げが、 【 モルタルの掻き落とし 】 ではないでしょうか。
もっと多くの人達に採用してもらいたい左官仕上げのひとつであります。

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2012.04.11

左官の仕事~ 珪藻土

内装左官仕上げで今一番仕上げられている塗り壁と言えば 【 珪藻土 】 の入ったモノでしょう。

昔ながらの家造りで 《 竹木舞 + 土壁or漆喰 》 を採用されるならば調湿効果は期待できます。
しかし、現代建築では石膏ボードが多用されており、竹木舞下地の土壁、漆喰はなかなか難しいのが現状ではないでしょうか。
石膏ボードが多用される現在、調湿効果がある塗り壁材料を求めるならば、まず思いつくのが 【 珪藻土 】 かと思います。

珪藻土を使った塗り壁は数百種類とありますが、 調湿機能を大々的に謳う割りに機能的な役割を成せてないニセモノ建材 が数多く出回っておりますので気を付けてください。
本当に良い珪藻土建材とはどういったものか詳しく書いていきますので、参考になれば幸いです。

《 珪藻土には自硬性はない 》 と認識している人は多いでしょう。
自硬性がないので塗り壁を固めるには、 “ つなぎ ” が必要です。

しかし、 “ つなぎ ” に使われた 樹脂 は珪藻土の孔を塞いでしまい、本来の機能を妨げてしまう事に・・・
「繋ぎが樹脂ではダメだ!」 と言う事で、次に セメント 、 石膏 、 石灰 などに白羽の矢が立てられて、とくに石灰を使ったモノは現在でも自然素材としてまだまだ根強い人気があるみたいですね。

しかし、 “ つなぎ ” がある以上、どうしてもそれが珪藻土の孔を塞いでしまい、珪藻土本来の機能を妨げてしまいます。
また、その “つなぎ”が入る事によって、珪藻土そのものの割合も少なくなってしまうので、せっかくの調湿効果もそれでは機能をしっかりと果たせません。
そんな時に 《 自硬性のある珪藻土 》 が出現しました。

こいつには 自硬性がある為、 “ つなぎ ” は必要ありません。
その為、珪藻土の孔を塞がず抜群の機能性があります。
今後は、 「 自硬性のある珪藻土を選び、繋ぎなどが入っているモノは使わない!」 という事がこれから珪藻土製品を選ぶポイントとなるでしょう。

次に産地です。
珪藻土は全国各地で採取できますが、様々な種類があるのですよ。
産地によって珪藻土の特性も違います。
例えば、濾過材に向く珪藻土(秋田産)、七輪に向く珪藻土(石川産)などなど・・・
珪藻土なら何でも良いという訳ではありません。
塗り壁で珪藻土に求めるモノはやっぱり 《調湿性能》 ですよね。

北海道の一部分でのみで採取される珪藻土には後で説明する 《メソポア珪藻土》 が多く含まれ、それ以外の産地で採取される珪藻土には 《マクロポア珪藻土》 が多く含まれています。
後に詳しく説明しますが、 《マクロポア珪藻土》 では、調湿効果が期待できません。
塗り壁に使う珪藻土は 北海道産の 《 メソポア珪藻土 》 が多く含まれている製品を選びたい ですね。-

珪藻土の孔の大きさである 《ポア》 も非常に重要です。
ポア(珪藻土の孔の大きさ)によって、珪藻土の性能は決まると言っても過言ではありません。
一般的にポアを測るのにナノという単位が使われております。
ナノとは ナノメートル《 百万分の一ミリ 》 の大きさの事です。
直径2ナノメートル以下を 《 ミクロポア 》 、直径2~50ナノメートルを 《 メソポア 》 、直径50ナノメートル以上を 《 マクロポア 》 と呼びます。-

主な メーカー製の珪藻土塗り壁材量はこの 《マクロポア珪藻土》 が使われている事が多い です。
上記でも触れましたが、 マクロポア ではあまり調湿効果がない のですよ。
ポアが大きく、調湿効果が期待できません。
ミクロポア では逆にポアが小さすぎて、吸湿機能はあっても放湿機能がイマイチなので調湿機能があるとは呼べません。

本当の意味で 調湿効果が期待できるのは 《 メソポア珪藻土 》 のみ であります。
珪藻土の塗り壁材を選ぶ時は、 「 メソポア珪藻土が多く入ったモノを塗ってください。 」 と伝えるのが良いかもしれませんね。


そもそも 《 調湿 》 とは何でしょうか?
調湿とは 吸湿 と 放湿 をバランス良く行う事 ではないでしょうか。
つまり、 湿気がある時は吸湿してくれて、乾燥が過ぎる時は放湿してくれる事 だと思います。
数値で説明すると、人間が快適に感じる湿度は 40%~70% です。

例えば、 相対湿度が90%の時はより多く吸湿してくれて、50%近くなると吸湿はあまりせず、40%を切ったら放湿をしてバランスを取ってくれる 《調湿効果》 のある塗り壁が理想 です。
そのような事が可能な 《メソポア珪藻土》 を多く含んだ塗り壁材料を採用したいですね。

長々と書きましたが、珪藻土を選ぶポイントは


① “つなぎ”を使わない自硬性のある珪藻土

② 調湿効果が抜群な北海道産のメソポア珪藻土

以上の2点です。
この2点は調湿にこだわるなら絶対に重要視したいですね。

形だけの自然素材、天然素材を謳っているニセモノじゃなく、 " 本当の意味での自然素材 " をを少しでも多くの人達に取り入れていただけたらと思います。


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2012.04.10

左官の仕事~ イタリア磨き

【 イタリア磨き 】 とは、イタリア 及び 周辺国 で伝統的に施工されている アンティコ・スタッコ や ベネチアート 等と呼ばれる イタリアン・スタッコ(イタリア漆喰工法) の和名 です。


イタリア国内では西洋建築に欠かせない大理石があまり多く産出しておりませんでした。
その為、イタリアでは大理石はとても高価な建材なので、その 高価な 大理石に漆喰工法で似せた工法 が開発されました。
それが、 イタリアン・スタッコ であります。
この イタリアン・スタッコ で施工した壁や柱があまりに美しく、それを聞きつけた周辺国へ伝わっていったそうです。

材料は 《石灰クリーム》 、 《大理石の粉》 、 《顔料》 などで、大理石のような美しい模様と光沢が特徴の仕上げであります。
日本でも ベネチアート 等の名称で類似品が販売されておりますが、樹脂の入った製品も少なくないので見極めて使っていきたいですね。
残念ながら、イタリア国内では現在、石灰クリームが主原料ではなく樹脂が主流みたいです。
本場イタリアでもそのような状況ですから、日本で本物のイタリアン・スタッコを施工されている現場は少ないようです。
今後、本物が見直されていけば良いですね。

施工には ヘラ か 薄手の鏝 が必要です。
仕上げを予測しながらパターンを3回に分けて塗り付け、たまに遠目からも確認しながら施工します。
3回目で塗り残しの無いように満遍なく材料を付けていき、タイミングを見計らって磨きます。何度も磨く事によって光沢が出て、美しい大理石調の壁となる事でしょう。-

この工法は簡単そうに見えてとても難しい仕上げなので、試験施工を行って仕上げを確認してから本番に臨みたいですね。

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2012.04.08

左官の仕事~ 石灰モルタル

前回、石灰クリームについて書きましたが、今回は 【 石灰モルタル 】 について書きます。

石灰モルタルとは 石灰クリーム に砂、寒水などの骨材を混ぜた塗り壁材料です。
日本で言う 砂漆喰 もある意味、 石灰モルタル だと思ってください。

エジプトにあるピラミッド や ヨーロッパの外壁 などで古くから使われてきた大変歴史のある材料です。
水硬性の材料(セメント、水硬性石灰など)が発明されるまでは、この石灰モルタルが建築に使われてきました。
最近では、西洋漆喰の既調合製品が流行っておりますが、殆どがこの石灰モルタルだと思われます。
ただし、モノによっては樹脂混入の可能性も否めません。
良く見極めてから使いたいですね。

何故、樹脂がいけないかというと、 石灰モルタルが本来持っているはずの 《 自浄作用 》 と 《 呼吸機能 》 を妨げてしまう ので、樹脂の入った材料を外壁に使えば汚れやすくなります。
その汚れ方が自然素材独特の渋味や味のある朽ちた感じではなく、ただ単に汚い汚れとなるのですよ。
ジョ○パット等を見れば良く分かると思いますが、不自然な汚れなのですよね。
だから、余計に汚く感じるのです。-

石灰モルタルの特徴としては、 《 浄化作用 》 と 《 消臭効果 》 が期待できる事の他、 《 表面強度が強く耐久性に優れている事 》 ですね。
日本の漆喰と同じく、長い時間を掛けて二酸化炭素を吸って石灰岩に戻ろうと変化していきます。
つまり、年月が経てば経つほど より強度が増す という事なのですよ。-

ただし、外壁で使うには西洋人のように良い意味での “ アバウトな感覚 ” が必要かもしれません。
石灰モルタルは強アルカリ性でカビには比較的強いのですが、それを過信し過ぎず 《 自然素材特有の侘び寂感 》 を楽しみたいですね。

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2012.04.07

左官の仕事~ 石灰クリーム

ここ数年で勢いのある塗り壁材料に西洋漆喰と呼ばれるものが挙げられます。
その原材料が 【 石灰クリーム 】 と呼ばれるモノで、日本では タナクリーム という商品名で馴染みがあると思います。
ただし、これは純粋な石灰クリームではなく、最初から使い易いようにメチルセルロース(糊)、炭酸カルシウム(骨材)、樹脂などが混入された既調合の製品です。

他にも ヨーロッパの国名の後ろに漆喰と名前が付いて販売されている殆どの製品が、この石灰クリームを主原料にした既調合の塗り壁材料だと思います。
例外は スペイン漆喰 と呼ばれる製品です。
これは粉体で販売されており、製品自体は水硬性なので 《 水硬性石灰 》 を使っているか、もしくは 《 セメント 》 が混入されているのでは? と推測されますね。

あくまで推測なので違ったらごめんなさい。


【 石灰クリーム 】 は表面強度がとても強く、鏝押さえを続けると比較的簡単に艶を出せます。
また、熟成させる(寝かせる)事によって粒子も安定し、滑らかでモチっとした材料になります。
イタリアでは最低でも2年以上は寝かせ、熟成期間により値段も大きく違うと聞きました。
何十年モノとかは大変高価で、熟成期間を重ねるとドンドン高価になっていくところは、まるでワインのようですね。
石灰クリームを自作される方も居られるようですが、熟成が短ければ 粒子が粗く安定性の悪い材料となります。
なるべく倉庫で熟成させたいのですが、なかなかそこまでは難しいかもしれませんね。

また、純粋な石灰クリームは既調合品(タナクリーム、西洋漆喰など)とは違い、自己調合をせねばならないのですが、その自己調合で作った材料は メーカーの保証などあるはずもなく、 塗った壁に対して全て自己責任となります。
逆に言えば、何が混入されているか製造過程の見えない既調合製品とは一線を画しており、自信を持って 「これは間違いなく自然素材だ! 」 と言えるような材料を作る事が出来るでしょう。

純粋な石灰クリームは日本でいえば粉末消石灰に当たる物です。
漆喰でもメーカー製の既調合があれば、自己調合で研究されている左官職人も居ますよね。
何故か、石灰クリーム系の材料はメーカー製の既調合に任せっきりで、石灰クリームそのものを研究している左官屋さんは少ない気がします。
そのような研究熱心な左官屋さんがもっと増えればよいですね。

ちなみにウチに三種類の石灰クリーム(イタリア産を2種類と国内産の特別仕様)が保管されておりますが、どれも微妙に違うのでまだまだ研究しがいのある建材であり、可能性を感じる材料の一つであります。

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2012.04.06

左官の仕事~ 漆喰 磨き

漆喰磨きとは漆喰を鏝で磨き続け、鏡面に仕上げる工法の事です。

磨き壁は白漆喰で施工されているケースが多いのですが、なかには 油煙を混入させた 黒磨き や、 弁柄を混入させた 赤磨き などがあります。
また、壁とは別に 出隅の面部分だけ白く磨く場合を、 面白(めんじろ) と呼び、 面部分だけを黒く磨く場合を 面黒(めんぐろ) と呼びます。
壁と出隅が色分け(例えば壁は黒漆喰で、出隅は白漆喰)で磨き壁を施工されている建物はとても美しく、その美しさに比例して凄い技術力と手間暇の必要な左官仕上げなのですよ。
私自身も魅了されている左官仕上げの一つであります。

磨き壁を施工する時に使う “ 磨き鏝 ” はとても硬度のある鏝で、制作するには途方もない手間と技術が必要である事を聞きました。
その為、磨き鏝を作る事が出来る鏝鍛冶は全国で数少ないのですよ。
今後の後継者不足も気になりますね。-

漆喰磨きは表面強度がとても強く、風雨にも強いので外壁(庇がある壁)に用いられてきました。
伝統的な建物に施工されている仕上げ方法で、全国各地の文化財なので見る事が出来ます。
しかし、日本各地で仕上げられてきた漆喰磨きの技法は 《 秘伝 》 とされているケースが多く、残念ながら 秘伝を伝えられずに技法が消えていったケースも少なくない と聞きました。 -

「このままでは左官の技が絶滅してしまう!そんな事ではイカン!」 と立ち上がってくれたのが左官界のカリスマ・久住章さんです。
久住さんは自身の知識を惜しげもなく披露して、さらに情報交換の出来る場も積極的に参加されている素晴らしい人なのですよ。
彼に影響を受けた左官屋さんは数え切れないほどいると思います。-

毎年、漆喰黒磨き講習会が全国各地で催されておりますが、まだまだ進化しています。
どんどんレベルも高くなっており、私自身も置いて行かれないようにしなければなりませんね。

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2012.04.05

左官の仕事~ 漆喰 撫で切り仕上げ と パターン仕上げ

漆喰で一番スタンダードな仕上げは硬押さえですが、最近はシンプルな 《撫で切り仕上げ》 、お洒落な 《パターン仕上げ》 も人気がありますね。
私自身もたまに施工しております。

《撫で切り仕上げ》とは塗り付け後、水持ちが良い状態の時に鏝を通して仕上げる事です。
また、《パターン仕上げ》とは文字通り、パターン付け(模様付け)をする仕上げでの事であります。

《撫で切り仕上げ》 や 《パターン仕上げ》に関しては古くから存在しており、かの有名な 桂離宮 では 【 パラリ壁 】 という仕上げが施工されております。
また、引き摺り鏝という舟形の鏝を使用して、 【 引き摺り仕上げ 】 という仕上げ方法も伝統のある仕上げ方である一方、 【 砂漆喰の撫で切り仕上げ 】 などもシンプルながら良く見ると表情が素敵ですね。

最近では洋風住宅も増えてきたので、それに合わせた模様付けもどんどん開発されております。
センスの良い模様は見ていても気持ちの良いモノですね。
パターン仕上げの場合は、左官職人のセンスに大きく左右されます。
施工する前に 左官屋さんとじっくり打ち合わせをして、試験施工をしてもらう のが良い仕上げをしてもらう秘訣ですよ。

パターン塗りは私自身も大好きな仕上げなのですが、気を付けなければならない点もあります。


1、外部で施工する場合は設計の段階で庇を出来るだけ大きくする。

2、凹凸があるので年月とともにカビや汚れも付き、それを 《 自然素材の風合い 》 として捉える事が出来るお客様以外には外部でパターン仕上げは施工しない。

3、漆喰は決してメンテナンスフリーではないので、いつかは塗り替えをしなければならない事をしっかり説明する。

最近は特に 「汚れない壁じゃなきゃイヤだ!」 というお客様も増えてきました。
そういったお客様には最初に サイディング や ガルバ をお勧めしたほうが無難かもしれません。
「どうしても外部に漆喰を塗ってほしい!」 と仰るお客様には、上記の事に気を付けてから施工したいですね。

パターン仕上げの凹凸が激しければ、それだけ埃が溜まりやすくなります。
内部ならば掃除をこまめにすれば大丈夫かもしれませんが、外部ならば土埃が雨の水分を吸ってカビの原因になるのですよ。

「 漆喰は強アルカリだからカビないよ!」 と仰る人もいるかもしれません。
しかし、現実には 漆喰にもカビは生えます。
それは何故でしょうか?

漆喰の主成分は消石灰です。
消石灰にはカビは生えません。
しかし、土埃と雨水があればカビが生えます。

簡単に書くと、


《 壁面に土埃が溜まる → 土埃が雨水を吸収する → カビの大好物がいっぱい → カビ発生》

という事です。
サイディングやガルバでも土埃が溜まればカビが発生する ので、パターン仕上げでカビが発生しないと言うことはありません。
庇を大きくして壁面もフラットに近い状態にすれば、ある程度はカビや汚れを防ぐ事が出来ますね。

漆喰の強アルカリ性質も過信せず、壁の寿命を出来るだけ伸ばしてやる事 を考えていけたらと思います。

以上の事を踏まえて、外部で施工する時には色々と注意する点がありますので、お客様と施工側がしっかりと話し合って決めていきたいですね。
今回、この記事を書くにあたり 「左官屋の癖に塗り壁を貶める事を書くな!」 とお叱りを受けるかもしれませんが、あまりに世間一般で 「漆喰は強アルカリだからカビない。メンテナンスフリーの塗り壁だ!」という風潮が一人歩きしている ので、歯止めも必要かなと思い書きました。


「それが自然素材。カビや汚れが付いてもそれが渋味と風合いに繋がって良いじゃないか!」 と私自身は思っておりますが、自身の価値観をお客様にゴリ押しする訳にはいきません。
だけど、古い町並みや古民家で塗られている漆喰壁を見ても 「美しい!」 と思ってしまうのは私だけではないでしょう。
そのような価値観のお客様がもっと増えて、塗り壁が広まっていってほしいと思います。

その為には私達左官屋がもっと塗り壁の良さをアピールしていかねばなりませんね。

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2012.04.04

左官の仕事~ 漆喰 硬押さえ

前回、本漆喰の材料について色々と書きましたが、今回は漆喰の一番スタンダードな仕上げ方である 【 漆喰 硬押さえ 】 について書きますね。


【 漆喰 硬押さえ 】 とは、 “ 漆喰を壁に塗り、鏝で数回押さえた 艶消しの仕上げ ” と私は認識しております。
鏝を何でも通して硬く押さえる事によって壁面の密度を上げ、 表面強度がとても強い壁 となります。-

この 【 漆喰 硬押さえ 】 はシンプルながらとても難しい仕上げなのですよ。
平面の壁なので左官の技術力が一番必要で、凸凹に塗ればムラの原因になります。
下地のコンディションも大変重要で、下塗りだからと言って凸凹に塗れば、上塗りを幾ら綺麗に塗っても乾きムラが出てしまい、それがテカりムラに繋がっていきます。
また、鏝を通すタイミングが遅れるとまたまたムラの原因に・・・
ムラを出さないようにするには、様々な条件をクリアして行かねばなりません。
この様々な条件をクリアした時にのみ、綺麗な壁が仕上がるのですよ。

さらに顔料、色土などで着色した 色漆喰 の場合は、 色ムラ にも気を付けなければなりません。
白漆喰よりもハードルが高くなります。
色漆喰を綺麗に仕上げるには本当に気を使うのですよ。

左官屋さんは道具にもこだわります。
最近は研究熱心な鏝鍛冶が開発した漆喰用の鏝も他種類にわたって出回っており、私もお気に入りの鏝が幾つかあります。
プラスチック製の鏝 を使われる左官屋さんもいますが、 艶が出やすくテカりムラの原因になります ので、基本的には使わない方が良いかもしれません。

本当に良い左官職人さんは道具もしっかり揃えているので、新規で仕事を依頼する時には道具箱の中身を見れば、ある程度の判断材料となるでしょう。
まぁ、中には私みたいに鏝マニアで 『綺麗な鏝を見るとニヤニヤしてしまう』 だけの人もいるのでご注意ください(笑
話はズレましたが、 【 漆喰 硬押さえ 】 を綺麗に仕上げるには 《 技術 、道具 、 材料 》 の三拍子が揃って始めて成り立つのです。
どれか一つでも欠けてはダメなのですよ。
技術は左官職人の腕であり、道具とは硬押さえに適した鏝であります。
そして材料も前回で話したとおり、とても重要な事ですね。

良い仕事をする為には手間暇を掛けたいですね。
その為にも、過度な価格競争に巻き込まないよう、左官職人を見守ってほしくあります。

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2012.04.03

左官の仕事~ 本漆喰(炊き糊漆喰)

今回は左官屋が大昔から扱っている塗り壁、 【 本漆喰 】 の材料について説明します。

まず、私が考える 【 本漆喰 】の定義は、 『 海藻糊を炊いて篩に掛け、その液体に消石灰と麻スサを混入した物 』 です。
つまり、 本漆喰の材料は 《 消石灰 、 麻スサ 、 海藻糊 を炊いて抽出した液体 》 の三種類だけ です。

その他の材料《炭酸カルシウム、粉末海藻糊、メチルセルロース、ガラス繊維、ナイロン繊維、合成樹脂、その他》 等々、これらが混入された物は 本漆喰とは呼べません。
メーカー製の漆喰製品(既調合品)も本漆喰ではないですね。

以上が私が考える本漆喰の定義であります。


次に本漆喰の材料である 《 消石灰、スサ(麻スサなど)、海藻糊(角叉、銀杏草、布海苔)を炊いて抽出した液体 》について説明します。
まず、一般的な粉末消石灰の作り方ですが、

《 石灰岩を焼く → 生石灰が出来上がる →少 量の水を加える → 粉末消石灰の出来上がり 》

大ざっぱに書くとこんな感じです。
“少量の水を加える”の部分を 『水のたくさん入ったプールに生石灰を投げ込む』 と粉末消石灰ではなく、ヨーロッパの漆喰 【石灰クリーム】 が出来上がります。
石灰クリームに関しては別の機会で書かせていただきますね。

漆喰の主原料である消石灰でありますが、これまた何でも良いという訳ではありません。
消石灰には 石灰岩 から作られている物と 貝殻(赤貝、帆立、牡蠣、その他) から作られた物があります。
貝殻を焼いて作る消石灰を私達は 貝灰 と呼んでおり、この貝灰を作ってくれる業者は日本全国捜しても片手で数えられるぐらいしか居ないのですよ。

また石灰岩から作られた消石灰も 重油などの燃料で作った 《油焼き消石灰》 と 昔ながらの製法で作った 《塩焼き消石灰》 があります。

《油焼き消石灰》 の特徴は、重油で石灰岩を高温で焼き上げ、自動機械を使って大量生産をした物。
粒子が細かく均一なので漆喰を作った時にクラックが出やすく、左官材料として使うには難しい。

《塩焼き消石灰》 は、石炭と少量の塩を使って石灰岩を低温で手間暇掛けてじっくりと焼き上げて作ります。
粒子が不均一なのでクラックが入りにくい強い材料を作る事が出来ます。

ついでに 《貝灰》 の特徴も書きます。

貝灰は石灰岩から作った消石灰よりも不純物が多く、粒子も不均一なので左官材料としてはとても優秀ですが、生産に大変な手間が掛かるので、値段も石灰石から作られた消石灰とは比べようもないほど高価な代物です。
後継者不足にも悩まされているみたいなので、数年後はもっとレアな材料となるかもしれません。


次にスサの説明をしますね。

本漆喰に使われる主なスサの原料は 《 マニラ、サイザル、ジュート、ケナフ 》 という植物の繊維です。
他にも 大麻、芋麻、亜麻 などが使われていたみたいですが、現在は “ ほぼ ” 入手不可能であります。

スサも原料にこだわれれば、とても強い漆喰が出来ると思います。
日本全国捜しても強いスサを作っている業者は数少ないですが・・・
安いだけの弱いスサを使えば弱い漆喰壁になりますので、工務店や建築会社は単価を抑えるのではなく、本当の意味で良い壁を作る為にも考えていただきたいです。


次は海藻糊の説明です。
漆喰に混入する海藻糊は大きく分けて 《 角叉 、 銀杏草 、 布海苔 》 の三種類です。

私の地方では主に角叉と銀杏草が多く出回っており、布海苔は滅多にお目に掛かれません。
関西のほうだと布海苔が多いと聞きました。
海藻糊に関しては地域性があるのでしょうね。

左官材料として使うには熟成も必要で、角叉や布海苔は一年、銀杏草は三年の間、倉庫で保管すれば腐食発酵して繊維が破れ、糊の成分が出やすくなる との事であります。

この海藻糊を 加熱処理した後、乾燥させて粉砕処理した物 が 《粉末海藻糊》 であります。
便利な製品ではありますが、どうしても本物の炊き糊にはかないません。
現在、この 《粉末海藻糊》 は粗悪品(ケミカルを多く混入した物)が数多く出回っておりますが、なかには良い製品もあるので扱う場合は良く見極めてから使っていきたいですね。

海藻糊の代わりにメチルセルロース(メト◎ーズ等)を使う人もいると聞きますが、 “ 化学のり ” ですから、これを使う時点で自然素材ではなくなってしまいます のでご注意を・・・

本漆喰 と 既調合の漆喰製品 とでは強度がまるで違います。
あまり単価、単価と言わずに長い目で見れば、施工単価が 少々高くてもそれだけの付加価値が 【 本漆喰 】 にある と思いますよ。

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