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2012.05.23

左官の仕事~ 土壁 撫で物仕上げ

和室に用いられる塗り壁は “ じゅらく ” と呼ばれており、皆さんも一度は耳にした事があると思います。
この じゅらく の名前の由来は 京都の聚楽第から採取される色土 からきております。
つまり、本物の じゅらく とは 聚楽土を使った土壁仕上げ の事なのですよ。

そして、この聚楽土を含む全国の色土を使って、鏝で撫で上げる仕上げの総称が 【 撫で物仕上げ 】 です。


撫で物仕上げにも種類があり、グレードによって単価も大きく違います。
簡単に説明させていただきますね。

《 切り返し仕上げ 》
土壁中塗りをした後、完全に乾燥させず(一日後か二日後)に水持ちが少しある状態で上塗りの材料を塗ります。
中塗り仕上げよりは大人しめだが、土と砂と藁の表情がかなり浮き出ていて表情豊かな仕上げです。
名前の由来は、仕上げに混入するワラスサを何度も切り返して使うからという説 と 本来の行程を切り返したまま省いてしまった仕上げという説 の二通りがあります。
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《 糊捏ね仕上げ 》
角叉など(他に銀杏草、布海苔)を炊いて抽出した糊の中に色土と微塵スサ(ワラスサの細かいモノ)、微塵砂などを混入した材料を薄塗りで仕上げる工法。
薄塗りなので表情はかなり大人しい。
薄塗りで作業性も良いが、糊が入っている為に耐用年数は短い。
糊が入っているので外部では使えず、内壁専門の仕上げです。
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《 糊差し仕上げ 》
後述の水捏ね仕上げの材料に海藻糊の溶液を少しだけ足した材料を使った仕上げ。
水捏ね仕上げに近い表情が出るらしい。
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《 水捏ね仕上げ 》
糊を一切入れず、土と微塵砂と微塵スサ、そして水だけで作った材料で撫で上げた土壁最高級の仕上げ。
主に数寄屋、茶室、高級料亭などで施工され、その上品で繊細な表情は風格さえも漂わせている。
仕上げに使う鏝も大変高価な鏝で、現在ではそれを作れる鏝鍛冶も日本で数少ない。
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《 長スサ散らし 》
水捏ね、糊捏ねを塗り付けた直後に長い藁スサを壁に投げ付け、撫で上げる仕上げ。
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《 引き摺り仕上げ 》
舟形の特殊な形状の鏝を使い、パターンを付ける仕上げ。
主に数寄屋、茶室などで仕上げられている。
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《 砂壁 》
藁スサを少な目にして、砂を多くした材料を塗り付け、撫で上げた仕上げ。
砂勝ちとも呼ぶ。
反対に藁スサが多い仕上げをスサ勝ちと呼ぶ。
現在では、樹脂で砂を固めた材料の事を指す場合が多い。
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《 蛍壁 》
錆壁とも言う。
鉄錆を土壁に混入する事によって、後々に錆が出てきて、それが蛍火のような表情を出す事からこの名が付いた。
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《 本聚楽 》
京都の聚楽第で採取された本聚楽土を使用した水捏ね仕上げ、もしくは糊捏ね仕上げの総称。
本聚楽という名が付いた商品、メーカー製の既調合品はこれを似せた仕上げで、本物ではない。
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以上が主な 【 土壁 撫で物仕上げ 】 の説明です。

土壁・撫で物仕上げは既調合製品(ジュラク)と比べると土の表情が豊かで暖かみがあります。
本物の土を使って仕上げているからでしょう。
樹脂が多く入っている既調合製品(ジュラク)では安らぎはあまり感じられません。
ニセモノは所詮ニセモノなのですよね。

土壁に囲まれた空間に居るだけで心が休まります。
それはきっと、 土=大地 であり、人間のDNAが大地に包まれていたいと本能的に感じているからではないでしょうか。
だから土壁は人の心に安らぎを与えてくれるのだと思います。

家とは自身が休む場所であり、その休む場所が大地(土)に囲まれた空間なんて贅沢ですよね。
だけど、そんな贅沢を昔の日本人は当たり前のように取り入れてきました。
何故、心休まる素材を放棄するのか私には理解できませんが、土を塗る事は少なくなってきました。

心が安らぐ空間作りを求めるならば、素材は大変重要かと思います。
大地の源である土ならば素材として申し分ないはず。

もっともっと土壁が見直されれば良いですね。

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2012.05.14

左官の仕事~ 中塗り仕上げ

建築の原点は 《 土 》 から始まったと言っても過言ではないでしょう。

何故、 《 土 》 なのでしょうか?

それはどこにでもあり、一番簡単に手に入ったからだと思います。

しかし、この手頃な 《 土 》 は 防火 、 断熱 、 蓄熱 、 遮音 、 調湿 、等々を兼ねた優秀な建材 でした。

「 土には断熱効果が期待できない! 」 と仰る人もいるでしょう。

実際、数値的なモノではグラスウールの1/10しかありません。

しかし、 土壁の家は 「 夏は涼しく、冬は暖かい 」 と間違いなく感じられます。

これはきっと、 調湿のコントロール とか 蓄熱効果 、 浄化作用 などの条件が重なる事によって、そう感じられるのだと私は考えております。

ただ単に一つの数値だけを見るのではなく、相対効果も気にしていただけたらと思います。


また、土壁は機能だけの問題じゃなく、土壁の空間に居るだけで何故かホッとするのですよね。

これは数値で示せないのですが、土壁には人を和ませる何かがあるのでしょう。

それはきっと、土そのものが生命の源である事を私達が直感的に感じているからかもしれません。

土は大地であり、命の源でもある。

だから、 優しさ と 懐かしさ を感じるのでしょうね。

体にも心にも優しい素材である土は何処でも手に入りますが、 掘る場所によって性質や色は全然違うのですよ。

場所によって茶色かったり黄色かったり、赤、白、黒、緑などなど・・・

自宅の土地に埋まっている土を掘り、それを自宅の壁に塗るなんて事も可能で、自宅の土を使った仕上げなんて素敵ですよね。

そもそも、日本の建築は 《 木と土の文化 》 です。

土を使った日本独自の工法も発展していき、全国各地で採取される色土を使った美しい建築物が伝統文化として伝えられてきました。

この土壁仕上げを施工する前に行う重要な作業のひとつに 《 中塗り 》 という工程があります。

中塗りとは基本的には仕上げの前工程を指します。

この中塗りをしっかり施工しなければ、どんなに素晴らしい仕上げをやろうとしても不可能なのですよ。

また、色々な事情で仕上げを塗らずに 《 中塗り 》 でしばらく留めておき、何十年後に仕上げ塗りをしたくなってもそれは可能であります。

昔は中塗りを施工して、軽く2~3年はそのままで、木と土の収縮がしっかり止まってから仕上げ塗りをしたモノです。

しかし、現在の工期優先な風潮の中ではなかなかそこまで我慢される人は少ないですが・・・

そういう意味では昔の建築のほうがドッシリ構えられて良かった面もありますね。

普通の中塗りとは違い、 【 中塗り仕上げ 】 とは見せる為の仕上げ壁です。

土と砂と藁の表情をバランス良く美しく魅せる為の配合が大変重要 であります。

上塗りをする事が前提の 《 中塗り 》 とは違い、 【 中塗り仕上げ 】 では土と砂は好みの大きさで篩って使い、スサの長さにもこだわりたいです。

仕上げとして見せる壁なのに普通の 《 中塗り 》 と同じ配合では悲しすぎますよね。

土壁の基本中の基本である 《 中塗り 》 を仕上げとして見せる 【 中塗り仕上げ 】 も簡単そうに見えて、実は奥が深い仕上げですよ。

何年後、何十年後にどんな仕上げをするかワクワクしながら構想を練って、いつか来るであろうその時を待つのも良いかもしれませんね。


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