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2014.07.19

左官の仕事~ ムチ漆喰

【 ムチ漆喰 】 とは琉球漆喰、沖縄漆喰と呼ばれる沖縄で独自の発展を遂げた伝統的な漆喰の事です。

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沖縄ではお祝いする日(正月、結婚式、出産など)に “ ムーチー ” と呼ばれる沖縄独特のお餅(月桃の葉に包んで蒸した餅)を近所に配ったり食べたりする習慣があります。
私の妻が沖縄出身なので、長女が生まれた時は沖縄の義母がムーチーを持参して駆けつけてくれました。

ムーチーの色は茶色味が掛かっており、本土の餅とは風味も全然違います。
ムチ漆喰は ムーチー に色や質感が大変似ている事からその名が付きました。
本土で言われている 「 色がお餅に似ている漆喰であり、モチがムチに訛って名前が付いた 」 という説には沖縄を愛する私としては真っ向から反論したい ですね。

大昔はムチ漆喰の原料として使われる消石灰を 《 珊瑚を燃やして作っていた 》 らしいのですが、現在の法律では 珊瑚を採ったり燃やしたりすると罰せられてしまいます。
その為、大昔の工法でムチ漆喰を作る事は不可能となりました。
沖縄でも石灰岩は採掘されております。
しかし、主にセメントとして加工されているらしく、ムチ漆喰の原材料としては加工されておりません。
現在では石灰は九州(大分県)で採れた石灰を送ってもらい、それを原料にムチ漆喰が作られているとの事です。

土佐漆喰と同じく、ムチ漆喰も海藻糊を混入せず、石灰に藁を混入して制作します。ふたつの違いは制作方法です。

土佐漆喰 = 消石灰 + 藁(発酵させたもの)

ムチ漆喰 = 生石灰 + 藁

つまり、藁を入れる材料が 《 消石灰 》 か 《 生石灰 》 の違いです
その為、両方とも似たような色をしておりますが、少しだけムチ漆喰のほうが色は濃いのですよ。
これは土佐漆喰に入れる藁は発酵させたものを入れる為かもしれません。

ムチ漆喰は土佐漆喰と同じく、紫外線に反応して色が薄くなっていきます。
土佐漆喰のパクリと思われるかもしれませんが、実は ムチ漆喰のほうが歴史は古い のですよ。
ムチ漆喰は13~14世紀、土佐漆喰は17~18世紀なので、ムチ漆喰のほうが500年ぐらいは歴史が古い という事になりますね。

元々、ムチ漆喰は壁を塗る漆喰と言うより、 “ 屋根瓦の継ぎ手 ” や “ 魔除けのシーサー ” 等で用いられてきました。
私自身も 《 むら咲むら 》 という体験施設で ムチ漆喰 のシーサーを2体作った事があります。
沖縄の別荘を建てる際、屋根の上に乗せる大型シーサーを作るよう義父に言われましたが、諸事情で本職のプロにお願いしました。
ちなみに下の写真は沖縄の重要文化財である  《 中村家住宅 》  のシーサーです。
沖縄の赤瓦とムチ漆喰の組み合わせも素敵ですよね。

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最近では、その優れた性能から壁にも塗られるようになり、沖縄の観光スポットである 《 アメリカンビレッジ 》 の敷地内でも大きな建物の外壁が ムチ漆喰 で仕上げられております。
その姿は大変美しく、沖縄独特の “ 赤瓦 ” とも非常にマッチした建物ですよ。
旅行で沖縄の アメリカンビレッジ に立ち寄った際には是非、 ムチ漆喰 の外壁も眺めて見てください。
きっと、感動されると思いますよ。

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沖縄独自の漆喰ですが、本土のほうにも 【 ムチ漆喰 】 の塗り壁が採用されるよう、私もいろいろ提案していきたいです。

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左官の仕事~ NHL(水硬性石灰)

漆喰の原料が 消石灰 なのは多くの人が知っているかと思います。

一般的に認識されている消石灰は、 《 気硬性 》 といって炭酸ガス(二酸化炭素)に反応して硬化していくのですよ。

水と反応して硬化する事はありません。 石灰が原料の漆喰などは、空気に触れさせねば練り置きして保管ができますよね。

しかし、ギリシャ や エジプト では紀元前の頃から、消石灰に ポゾラン(可溶性シリカ分の多い火山灰,白土,凝灰岩,ケイ藻土など) を混入させてポゾラン反応を起こし、水に反応して固まる 《 水硬性 》 の材料が用いられてきました。

これが 【 NHL 】 の始まりと言われており、その後ローマ帝国によって更に発展を遂げていきます。

近代になって セメント が開発されるまでは、西洋建築の中枢を担ってきた材料と言えるでしょう。

【 NHL 】 とは “ Natural Hydraulic Lime ” の略称、つまり 天然水硬性石灰 のこと です。

この NHL は、   最初に水と反応して初期硬化を行い、さらに長い年月を掛けながら炭酸ガスを吸って硬化し続けていく のですよ。

簡単に説明すると、   《 水硬性 》 と 《 気硬性 》 の特性を併せ持っている という事です。

塗った次の日には固まっているので、雨風の心配もそれほどしなくて済むのが利点ですね。

【 NHL 】 は耐久性に大変優れており、石灰モルタルとして厚塗りする事も出来るので、西洋では外壁にも塗られているらしいですよ。

また、吸放出性能なども通常の石灰(気硬性石灰)よりも優れているので、内部で使うのも良さそうですね。

もちろん、天然素材100%なので有害な物質(ホルムアルデヒド、アスベスト等)の心配はありません。

日本では、 NHL(水硬性石灰) が輸入される前にセメントが輸入されました。 セメントの普及と古来より漆喰工法が確立されていたので、日本ではNHL(水硬性石灰)は定着しなかったようです。

その為、私達日本人には馴染みの薄い材料ですが、その歴史は   5,000年以上 と大変古く、ヨーロッパのほうでは歴史の深い建築材料なのですよ。

最近の西洋建築を模倣した住宅では、外壁に 樹脂製品(ジョ○パット、ベ○アート等) が多く塗られております。

しかし、これらはヨーロッパ等で見られる本物の塗り壁とは風合いが全然違いますよね。

また、これらの新建材と比べ、 NHL の耐久性は歴史が実績を証明してくれております。

欠点は 値段が高い ことですが、その耐久性は素晴らしく、長い目で見れば樹脂製品よりも遙かにお得ですよ。

まだまだ日本では馴染みが薄い材料ではありますが、機能的にも優れている NHL がもっと日本で普及していけば良いですね。

その為にも私達左官屋が 【 NHL 】 を研究し、提案し続けなければ・・・


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