カテゴリー「西洋漆喰・石灰クリーム」の記事

2015.03.20

左官の仕事 ~ タデラクト

モロッコのマラケシュ地方近辺では、耐水性、撥水性に優れた漆喰が伝統的に施工されております。
その漆喰は元々、壺の表面を仕上げるのに使われておりました。
近年、その性能と仕上げの美しさがヨーロッパでは見直され、洗面台や浴槽などの水回りでも施工されているようです。
漆喰でありながら 水回りにも使える材料 、それが 【 タデラクト 】 なのですよ。

タデラクトの原材料である 《 マラケシュ石灰 》 は、日本でも K社 と P社 が輸入販売をされておりますが、P社のほうは責任施工体制なので、一般の人が材料だけを手に入れるのは難しいかもしれません。
マラケシュ石灰の硬化メカニズム(水硬性なのか?それとも気硬性なのか?)は、両社のサイトを見る限り全く違う事が記載されており、私としても困惑しております。
私が使った感じでは、水で練って一晩以上寝かしてから材料を使うので、おそらく気硬性の石灰だと思いますが・・・
水硬性ならば水で練った材料は、一晩置いたらカチコチに固まる筈ですよね。
私の認識が間違っていたらごめんなさい。

タデラクトの施工方法はとてもユニークで、 石を使って磨く のですよ!

003


006


009


012

石で磨く為、日本の漆喰磨き壁のような色ムラのない綺麗な平面の壁とは違い、アバウトな色ムラと凸凹が何とも味わい深い壁となります。
また、曲面などのややこしい部分にも施工がしやすいのも良いですね。
磨き石 は何でも良いという訳ではなく、 モース硬度が7以上 の石が好ましいとの事です。

注意したいのが、耐水性、撥水性が非常にある漆喰ではありますが、 この耐水性はあくまでモロッコやヨーロッパの人達の感覚なので、キッチリした日本人の考える耐水性とは少々違う可能性もあります。
特に水回りで使う時は、下地の段階でしっかりと防水処理をしておいたほうが無難かもしれませんね。
その辺りは今後も検証していきたいです。

まだまだ私も 【 タデラクト 】 は勉強不足で現場での施工に至っておりませんが、いつか挑戦してみたい左官仕上げのひとつであります。

|

2014.07.19

左官の仕事~ NHL(水硬性石灰)

漆喰の原料が 消石灰 なのは多くの人が知っているかと思います。

一般的に認識されている消石灰は、 《 気硬性 》 といって炭酸ガス(二酸化炭素)に反応して硬化していくのですよ。

水と反応して硬化する事はありません。 石灰が原料の漆喰などは、空気に触れさせねば練り置きして保管ができますよね。

しかし、ギリシャ や エジプト では紀元前の頃から、消石灰に ポゾラン(可溶性シリカ分の多い火山灰,白土,凝灰岩,ケイ藻土など) を混入させてポゾラン反応を起こし、水に反応して固まる 《 水硬性 》 の材料が用いられてきました。

これが 【 NHL 】 の始まりと言われており、その後ローマ帝国によって更に発展を遂げていきます。

近代になって セメント が開発されるまでは、西洋建築の中枢を担ってきた材料と言えるでしょう。

【 NHL 】 とは “ Natural Hydraulic Lime ” の略称、つまり 天然水硬性石灰 のこと です。

この NHL は、   最初に水と反応して初期硬化を行い、さらに長い年月を掛けながら炭酸ガスを吸って硬化し続けていく のですよ。

簡単に説明すると、   《 水硬性 》 と 《 気硬性 》 の特性を併せ持っている という事です。

塗った次の日には固まっているので、雨風の心配もそれほどしなくて済むのが利点ですね。

【 NHL 】 は耐久性に大変優れており、石灰モルタルとして厚塗りする事も出来るので、西洋では外壁にも塗られているらしいですよ。

また、吸放出性能なども通常の石灰(気硬性石灰)よりも優れているので、内部で使うのも良さそうですね。

もちろん、天然素材100%なので有害な物質(ホルムアルデヒド、アスベスト等)の心配はありません。

日本では、 NHL(水硬性石灰) が輸入される前にセメントが輸入されました。 セメントの普及と古来より漆喰工法が確立されていたので、日本ではNHL(水硬性石灰)は定着しなかったようです。

その為、私達日本人には馴染みの薄い材料ですが、その歴史は   5,000年以上 と大変古く、ヨーロッパのほうでは歴史の深い建築材料なのですよ。

最近の西洋建築を模倣した住宅では、外壁に 樹脂製品(ジョ○パット、ベ○アート等) が多く塗られております。

しかし、これらはヨーロッパ等で見られる本物の塗り壁とは風合いが全然違いますよね。

また、これらの新建材と比べ、 NHL の耐久性は歴史が実績を証明してくれております。

欠点は 値段が高い ことですが、その耐久性は素晴らしく、長い目で見れば樹脂製品よりも遙かにお得ですよ。

まだまだ日本では馴染みが薄い材料ではありますが、機能的にも優れている NHL がもっと日本で普及していけば良いですね。

その為にも私達左官屋が 【 NHL 】 を研究し、提案し続けなければ・・・


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012.04.10

左官の仕事~ イタリア磨き

【 イタリア磨き 】 とは、イタリア 及び 周辺国 で伝統的に施工されている アンティコ・スタッコ や ベネチアート 等と呼ばれる イタリアン・スタッコ(イタリア漆喰工法) の和名 です。


イタリア国内では西洋建築に欠かせない大理石があまり多く産出しておりませんでした。
その為、イタリアでは大理石はとても高価な建材なので、その 高価な 大理石に漆喰工法で似せた工法 が開発されました。
それが、 イタリアン・スタッコ であります。
この イタリアン・スタッコ で施工した壁や柱があまりに美しく、それを聞きつけた周辺国へ伝わっていったそうです。

材料は 《石灰クリーム》 、 《大理石の粉》 、 《顔料》 などで、大理石のような美しい模様と光沢が特徴の仕上げであります。
日本でも ベネチアート 等の名称で類似品が販売されておりますが、樹脂の入った製品も少なくないので見極めて使っていきたいですね。
残念ながら、イタリア国内では現在、石灰クリームが主原料ではなく樹脂が主流みたいです。
本場イタリアでもそのような状況ですから、日本で本物のイタリアン・スタッコを施工されている現場は少ないようです。
今後、本物が見直されていけば良いですね。

施工には ヘラ か 薄手の鏝 が必要です。
仕上げを予測しながらパターンを3回に分けて塗り付け、たまに遠目からも確認しながら施工します。
3回目で塗り残しの無いように満遍なく材料を付けていき、タイミングを見計らって磨きます。何度も磨く事によって光沢が出て、美しい大理石調の壁となる事でしょう。-

この工法は簡単そうに見えてとても難しい仕上げなので、試験施工を行って仕上げを確認してから本番に臨みたいですね。

Kabe_003


Kabe_004


001


| | コメント (0)

2012.04.08

左官の仕事~ 石灰モルタル

前回、石灰クリームについて書きましたが、今回は 【 石灰モルタル 】 について書きます。

石灰モルタルとは 石灰クリーム に砂、寒水などの骨材を混ぜた塗り壁材料です。
日本で言う 砂漆喰 もある意味、 石灰モルタル だと思ってください。

エジプトにあるピラミッド や ヨーロッパの外壁 などで古くから使われてきた大変歴史のある材料です。
水硬性の材料(セメント、水硬性石灰など)が発明されるまでは、この石灰モルタルが建築に使われてきました。
最近では、西洋漆喰の既調合製品が流行っておりますが、殆どがこの石灰モルタルだと思われます。
ただし、モノによっては樹脂混入の可能性も否めません。
良く見極めてから使いたいですね。

何故、樹脂がいけないかというと、 石灰モルタルが本来持っているはずの 《 自浄作用 》 と 《 呼吸機能 》 を妨げてしまう ので、樹脂の入った材料を外壁に使えば汚れやすくなります。
その汚れ方が自然素材独特の渋味や味のある朽ちた感じではなく、ただ単に汚い汚れとなるのですよ。
ジョ○パット等を見れば良く分かると思いますが、不自然な汚れなのですよね。
だから、余計に汚く感じるのです。-

石灰モルタルの特徴としては、 《 浄化作用 》 と 《 消臭効果 》 が期待できる事の他、 《 表面強度が強く耐久性に優れている事 》 ですね。
日本の漆喰と同じく、長い時間を掛けて二酸化炭素を吸って石灰岩に戻ろうと変化していきます。
つまり、年月が経てば経つほど より強度が増す という事なのですよ。-

ただし、外壁で使うには西洋人のように良い意味での “ アバウトな感覚 ” が必要かもしれません。
石灰モルタルは強アルカリ性でカビには比較的強いのですが、それを過信し過ぎず 《 自然素材特有の侘び寂感 》 を楽しみたいですね。

002


003


| | コメント (0)

2012.04.07

左官の仕事~ 石灰クリーム

ここ数年で勢いのある塗り壁材料に西洋漆喰と呼ばれるものが挙げられます。
その原材料が 【 石灰クリーム 】 と呼ばれるモノで、日本では タナクリーム という商品名で馴染みがあると思います。
ただし、これは純粋な石灰クリームではなく、最初から使い易いようにメチルセルロース(糊)、炭酸カルシウム(骨材)、樹脂などが混入された既調合の製品です。

他にも ヨーロッパの国名の後ろに漆喰と名前が付いて販売されている殆どの製品が、この石灰クリームを主原料にした既調合の塗り壁材料だと思います。
例外は スペイン漆喰 と呼ばれる製品です。
これは粉体で販売されており、製品自体は水硬性なので 《 水硬性石灰 》 を使っているか、もしくは 《 セメント 》 が混入されているのでは? と推測されますね。

あくまで推測なので違ったらごめんなさい。


【 石灰クリーム 】 は表面強度がとても強く、鏝押さえを続けると比較的簡単に艶を出せます。
また、熟成させる(寝かせる)事によって粒子も安定し、滑らかでモチっとした材料になります。
イタリアでは最低でも2年以上は寝かせ、熟成期間により値段も大きく違うと聞きました。
何十年モノとかは大変高価で、熟成期間を重ねるとドンドン高価になっていくところは、まるでワインのようですね。
石灰クリームを自作される方も居られるようですが、熟成が短ければ 粒子が粗く安定性の悪い材料となります。
なるべく倉庫で熟成させたいのですが、なかなかそこまでは難しいかもしれませんね。

また、純粋な石灰クリームは既調合品(タナクリーム、西洋漆喰など)とは違い、自己調合をせねばならないのですが、その自己調合で作った材料は メーカーの保証などあるはずもなく、 塗った壁に対して全て自己責任となります。
逆に言えば、何が混入されているか製造過程の見えない既調合製品とは一線を画しており、自信を持って 「これは間違いなく自然素材だ! 」 と言えるような材料を作る事が出来るでしょう。

純粋な石灰クリームは日本でいえば粉末消石灰に当たる物です。
漆喰でもメーカー製の既調合があれば、自己調合で研究されている左官職人も居ますよね。
何故か、石灰クリーム系の材料はメーカー製の既調合に任せっきりで、石灰クリームそのものを研究している左官屋さんは少ない気がします。
そのような研究熱心な左官屋さんがもっと増えればよいですね。

ちなみにウチに三種類の石灰クリーム(イタリア産を2種類と国内産の特別仕様)が保管されておりますが、どれも微妙に違うのでまだまだ研究しがいのある建材であり、可能性を感じる材料の一つであります。

004


005


| | コメント (0)

2010.05.29

石灰クリームについて

今回は石灰クリームについて、詳しく説明しようと思います。


西洋漆喰の原材料である 石灰クリーム とは、 石灰石 を約900度の温度で焼成させてできた 生石灰大量の水で消化させてペースト状になった物 の事です。
日本の漆喰の原材料である 粉末消石灰 は 生石灰少量の水で消化させて作る ので、簡単に言えば 消化させる水の量の違い かと・・・

日本の漆喰との違いは、表面強度が高く外部にも使え、 鏝押さえを続けると簡単にツヤが出ることです。
また、熟成させる(寝かすとも言う)事によって粒子も安定し、なめらかでモチっとした材料となります。
イタリアなどでは最低2年寝かし、熟成期間によって値段も大きく変わってくるそうです。
何十年物とかは大変高価で、熟成期間によって価格が上下するところは ワイン に似てますね(笑

石灰クリームは比較的簡単に作る事は出来ますが、 熟成期間が短ければ粒子も粗く、安定した材料にはならない かと思います。
なので、私は イタリア産 のモノか、日本のメーカーに特別に作っていただいたモノしか扱っておりません。
もちろん、純粋な石灰クリームなので骨材や糊材は混入されておらず、 既調合とは違って材料に関して全て自己責任となります。
逆に何が入っているのか分からない既調合品とは一線を画しており、 自信を持って自然素材、健康素材と言える材料を作る事が出来る でしょう。

西洋建築の外壁(塗り壁)は石灰クリームに骨材を混入した 石灰モルタル が大昔から塗られており、これを用いられた西洋の歴史ある建築物は味わい深く独特の渋さが素敵ですよね。
日本の西洋風住宅ではそれに似せた樹脂系の塗り壁材を使っており、1,2年で汚くなってしまいますが、本物の石灰クリーム(石灰モルタル)を使えば 経年変化 を楽しめるかと思います。
もっと普及して欲しい塗り壁材料の一つであります。


Aaa000


明日はこの 石灰クリーム を使って、設計事務所の壁を仕上げてきます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.05.27

イタリア漆喰

イタリア漆喰の輸入代理店を訪ねて、情報交換と今後の体制を確認して参りました。

以前、 イタリア磨きの記事 を書きましたが、イタリア磨きとは イタリア漆喰 の仕上げの一つです。

イタリア漆喰とは 石灰クリーム が主原料の 伝統的な漆喰工法 であります。

この石灰クリームは何千年前から塗られている歴史ある漆喰なので、施工する立場としても安心して取り入れる事が出来ますね。

残念な事に日本の建材メーカー数社は 合成樹脂 が主原料の 類似品 を出しており、そのような ニセモノ を店舗などの壁でよく見かけます。

しかし、ニセモノは所詮ニセモノ・・・

悲しいかな、漆喰の浄化作用などある筈がなく、数年で汚れが目立ってきます。

本物のイタリア漆喰 は経年変化と共に美しさに磨きがかかり、数年後には渋くて味わい深い魅力的な壁となっていることでしょう。


Stucco033


Stucco034


Stucco036


Stucco035


Stucco014


Stucco013


Stucco012


Stucco011


Stucco010


Stucco009


Stucco008


Stucco007


Stucco006


Stucco005


Stucco004


Stucco003


Stucco002


Stucco001


Stucco015


Stucco016


Stucco017


Stucco018


名古屋地区だけじゃなく、全国各地を飛び回って 本物のイタリア漆喰 を扱い、このような仕上げをしていきたいです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.05.13

イタリア磨き

“イタリア磨き”(イタリア漆喰)とはイタリア周辺国では大昔から伝統的に施工されている漆喰塗り壁工法です。

イタリアでは大理石が多く採取できないので大変高価であり、 “石灰クリーム”大理石の粉 を混入した材料で壁を塗り、高価な大理石の壁や柱に似せた左官仕上げとして、イタリアを中心に周囲へ広まっていったとの事です。

00078


00079


00080

施工法としては、西洋の技法で作られた石灰、 “石灰クリーム”粉末大理石顔料 を入れた材料を使い、パターンを付けながら塗り付けて最後に磨き上げます。
このパターンの付け方が重要で、私も何十回と練習してようやく写真のパターンを出す事が出来ました。
練習あるのみですね。

日本の石灰は “消石灰” を使いますが、ヨーロッパでは “石灰クリーム” を使います。
作り方が違うので、性質も大きく違ってきます。

“石灰クリーム” については後日、詳しく説明したいと思います。

| | コメント (4) | トラックバック (0)